食品の安全性,環境汚染,医薬品の安全性など,毒性学に関する社会的関心が急速に高まっている。これに伴い,毒性学に求められる情報は,よりいっそうの厳格さが要求される。獣医師はヒトを含めた多くの動物種に関する知識と技能をもつことから,毒性学関連分野でも重要な役割を果たしてきたが,益々大きな期待がかけられている。
本書は薬理学,生理学,生化学などの基礎科学から,動物やヒトの臨床や法律までにも及ぶ毒性学に関する広範な事項を厳選し,獣医師として必要な毒性学のスタンダードを目指した。また,コラムあるいはBOXとして発展的な内容にも言及している。獣医学に関係の深い事項を取り上げるとともに,一般の毒性学の基礎を学ぶ上でも十分な内容となっている。
■主要目次■
第1章 毒性学概論: 毒性物質の分類/毒性発現様式/毒性に影響を与える因子/データの解析
第2章 化学物質の体内動態と代謝: 吸収/化学物質の分布に関わる要因/代謝/排泄/トキシコキネテックス
第3章 毒性試験の実施と一般毒性: 毒性試験基準/毒性試験と評価法/GLP
第4章 遺伝毒性: 突然変異とその成因/染色体異常/主な遺伝毒性物質/遺伝毒性試験
第5章 発がん性: 遺伝毒性と発がん性/発がんの機構/主な発がん物質/発がん性試験
第6章 生殖発生毒性: 生殖発生毒性/個体発生および発生毒性/生殖発生毒性物質/生殖発生毒性試験
第7章 呼吸器毒性・循環器毒性: 化学物質による呼吸器障害/呼吸器毒性物質/吸入毒性試験
化学物質による循環器障害/循環器毒性物質
第8章 免疫毒性: 免疫毒性/免疫毒性物質/免疫毒性試験
第9章 肝毒性: 化学物質による肝障害/肝毒性物質/肝障害に関わる検査項目
第10章 腎毒性: 化学物質による腎障害/腎毒性物質/腎障害に関わる検査
第11章 皮膚・粘膜毒性,感覚器・運動器毒性
皮膚からの化学物質の吸収/皮膚・粘膜毒性/皮膚・粘膜毒性試験
視覚器毒性/聴覚器毒性/骨・軟骨毒性/筋肉毒性
第12章 内分泌毒性,造血・血液毒性: 化学物質による内分泌障害/化学物質による造血・血液毒性
第13章 神経毒性,消化管毒性,一般薬理試験
化学物質による神経障害/神経毒性物質/化学物質による消化管障害/消化管毒性物質
一般(安全性)薬理試験: 試験系についての一般的配慮/コアバッテリー試験/フォローアップ試験/補足的安全性薬理試験
第14章 環境毒性:環境汚染物質の動態/生態毒性試験/環境汚染に関する法規と法で定められた環境毒性物質
第15章 リスクアナリシス: リスクアセスメント/リスクマネージメント/リスクコミュニケーション
コラム 山極,市川のコールタール発がん/がん遺伝子の発見/ヒキガエル毒と強心作用/ヘビ毒/DDTの盛衰
BOX 同時適合対照よりも文献対照を用いた方が適切である例/毒性試験でよく使われる統計手法/医薬品の申請に必要な資料/GLPの概要/国際的な化学物質の評価(文書)/数理モデルによるリスクと実質安全量の計算法/点推定法と確率的暴露推定法/リスクマネージメントに関わる法規など
【改訂版】
獣医毒性学